「カーマイン」に乗せて――ELLEGARDENと『ONE PIECE』、変わるものと変わらないもの

ELLEGARDENが『ONE PIECE』のオープニングを飾ると知ったとき、胸に湧き上がったのは、まるで少年時代に駆け上がった夕焼け坂のような感情だった。喜びがじんわり広がる裏側で、どこか懐かしいさみしさがにじむ。そんな複雑な味わいを、どう言葉にすればいいのだろう。

「『ONE PIECE』のためなら是非」——細美武士のその一言には、ファンとして共感せずにはいられない。彼らが20年以上も走り続けてきたロックバンドとしての軌跡と、ルフィたちが紡いできた大海原の冒険は、どこか似ている。妥協なく己の道を切り拓く姿勢。仲間と奏でる不器用なハーモニー。ELLEGARDENのギターサウンドが、次週の航海を彩るのだと思うと、興奮で指先が震える。

けれど、ふと頭をよぎるのは「初めてのアニメ主題歌」という事実だ。彼らはこれまで、私たちの青春のBGMとして、車の窓を全開にした夏の夜や、くすんだイヤホンから漏れる教室の隅で響いていた。その音が今、全世界に拡がる『ONE PIECE』という物語に溶け込む。もちろん誇らしい。でも、まるで秘密の宝物がみんなのものになってしまったような、少しだけもどかしい感覚がついてまわる。

変わらないものもある。細美の歌詞が刻む等身大の葛藤や、疾走感あふれるリフは、きっと麦わらの一味の背中を押すだろう。変わるものもある——かつて「風の日」を口ずさんでいた私たちは、もう「カーマイン」を聴きながら、子供たちに「ELLEGARDENって何?」と聞かれる年齢になった。

8月10日。テレビの前で新OPが流れる瞬間、私はきっと二重写しの風景を見るのだろう。スクリーンに映るルフィの笑顔と、20代の私が握りしめていたELLEGARDENのライブチケット。色褪せないカルマイン(深紅)のように、熱いものは時代を超えて響く。それでも、あの日々はもう戻らないから——だからこそ、この新しい出会いが愛おしい。

「さあ、次の歌を唄ってくれ」
ELLEGARDENの音と『ONE PIECE』の波音が、またひとつ、私たちの新しい記憶の錨(いかり)を降ろしていく。

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